The Dancing Homeless

2018年09月26日

ソケリッサの代表を務めるアオキ裕キさん(50)は、チャットモンチーやL'Arc-en-Cielなどの人気アーティストやCMの振付師だった。NYにダンス留学中、9.11 に遭遇し「表面的なカッコ良さを追求するダンスではなく、内面を形にしたい」という思いが生まれる。そして帰国後ふと、新宿の路上生活者に目が留まる。
「寝る場所もなく、毎日の食事でさえままならない。日々生きることに向き合わざるを得ない生活をしている彼ら、全てを失い肉体だけが残った彼らだからこその表現があると確信した」。

2007 年に結成、現在は8名で活動する。

ソケリッサの振り付けはアオキさんが考えるわけではない。型にはめた踊りにはしたくないのだという。例えば「太陽を飲み込んで」といった抽象的で意味深な言葉を投げかける。その言葉を元にメンバー自身が考え、自らの振りをつけていく。だからこそ彼らにしか出来ない何かが、踊りとなって生み出されていく。それは彼らそのものであり、その内なるものを身体全体で表現する。

今回、映像の後半では、「NPO法人こえとことばとこころの部屋(ココルーム)」の呼びかけで、メンバー6人が関西の人々とワークショップを行った。一般の参加者と準備体操から始まり、ソケリッサが普段どのように振り付けをしているのかを体験。そして最後は、作品『日々荒野』を一緒に作り上げ、観客の前で公演した。

参加者にとっては刺激的な体験だったようだ。ある参加者は「言葉で振り付けするからこそ、人によっての感じることも違うし、それをどうやって身体から正直に出していくかも人それそれなのでとても興味深かった」。またある参加者は「いざ踊ると、メンバーの方は周りなど気にしないので、表現が豊か。私たちの方は、色々と周りを気にして生きてるんだと感じた。それは単純に"生きる"ということが彼らの根底にあるからではないかと思った」。ソケリッサのメンバーの踊りに、涙する参加者も見られた。そんな一般の参加者とともに舞台に立つことで、メンバーも刺激を受け、新たな表現が生まれていることが印象的だった。                            

私は当初「ホームレスの人たちが踊る」という話を聞いたとき、「社会復帰の一環」の活動なのだろうという、ありがちな発想をしていた。しかし、彼らの踊りを生で見たとき、その考えは一瞬で覆された。

アオキさんには、彼らを社会復帰させようというような気持ちは更々ない。ただただ一緒に踊る中で、彼らと共に路上生活をしてきたホームレスだからこそ出来る肉体表現を高めたいと考えている。そして、メンバーもそれに答えるかのように彼らの表現を追求している。

どのようにして彼らの踊りは生まれるのか、なぜあのような踊りができるのか、私の関心はそこに向かうようになった。様々な困難に直面し、ホームレスというどん底まで落ちた彼らが見せる、彼らにしかできない"生きる"を形にした踊り。それは彼らが生きてきた証そのものだ。その力を目の当たりにして、恵まれた環境に生きてきた自分の身体が少し心もとなく思ったのは、私だけだろうか。




その他の新着作品