#私は黙らない〜#MeTooから#WithYouへ〜

2018年05月09日

「Time's Up」


いま、世界中で、女性たちが声を上げ始めている。
2017年1月、アメリカの首都・ワシントンDCに数十万人が抗議のために集結した。集会のタイトルは「Women's March」。ドナルド・トランプ大統領の就任後、初の土曜日、新政権とその政策に対して反対の意思を示すため、市民・著名人・政治家たちが垣根を超え、大統領が掲げる政策(移民への方針、女性の権利の問題等)に対しての率直な反対を呼びかけた。この日の抗議はワシントンで約50万人、全米500以上の場所で行われたマーチ全体では、300万から500万人もの人々が参加したと言われている。ここ日本ではそこまで定着をしていないが、市井の人間が行える政治参加として「デモ」は、政治を動かす可能性を秘めた一つの権利行使として、また自らの意思を示し、社会にその問題を可視化させる行為として、有形無形の力を秘めている。

そして昨年の秋、ハリウッドの大物プロデューサーによるセクハラ疑惑が勇気ある女性たちの告発によって明るみになり、SNS上で「#MeToo」というハッシュタグを用いて、過去に同じような被害・不快な経験をした事を公にする新しい動きが生まれた。女性そして男性たちが団結し、セクハラや性的暴行に立ち向かう動きが、世界的に広がっている(今年4月には「#MeToo」の発端となったセクハラ疑惑について報道した、ニューヨーク・タイムズとザ・ニューヨーカーが、ピューリッツァー賞を同時受賞している)その根底にあるのは、既成の価値観や男性中心の社会、性差別に対して、「もう終わりにしよう」「新しい社会を共に作ろう」という、未来に向けたポジティブなメッセージだ。

「#私は黙らない」


そして、ここ日本でも−−保守的といわれるこの国でも−−「#MeToo」のムーブメントが、いままさに大きな熱を持って高まり始めている。その大きなきっかけとなったのは、今年4月に明るみになった、財務事務次官によるテレビ局の女性記者に対するセクハラ行為についての一連の報道。前近代的と指摘されても反論のできない「家父長制」「古い職場の作法」「男性中心社会」に対して、男女を問わず大きな議論を呼ぶこととなった。そして、自分たちの意思を実際の行動で示そうとする若い世代がいる。

2018年4月28日の午後、新宿アルタ前で開催された街宣行動「#私は黙らない0428」。学生・主婦・元セックスワーカー・フェミニストなど、有志の女性たちを中心に、その思いに同調する人々が結集し、それぞれの思いを率直に語った。呼びかけ人のひとりである、津田塾大学4年の溝井萌子は「この問題は、女性だけの問題にしてはいけない」と語る。「この社会に生きる全ての人が、ジェンダーの枠に捉われず自分らしくいられるために、模索していくことが大切なのだ思う」と力を込めた。
この日の街宣活動を応援していた上智大学の三浦まり教授は「アメリカの運動を経て、日本でもついに "#MeToo" の地熱が高まってきた」と言う。「次に大切なのは、どのような行為がセクハラなのかを、法律でしっかり規定すること。厳正な対処ができる法整備を進めていくことが大切だと思います。そのことが、今回のような事件の再発防止につながっていくのでは」と語った。三浦教授は、女性議員の国会における割合を向上させようという「パリテ・キャンペーン」を推進しており、様々な世代による取り組みが、同時並行で進んでいる。

「#MeToo」から「#WithYou」へ


新宿での街宣では、リレー方式でスピーチが続き、春の空に、新しい未来に向けての確かなメッセージが響いていた。集まった参加者は数百名。目立ったのは、思い思いのメッセージを込めた手作りのプラカードを、それぞれが持参していたことだ。その中にあった、ある言葉「#WithYou」−−被害者を孤立させない、共に新しい社会をつくっていく−−勇気を出して声を上げた女性たちの思いを胸に、私たち一人ひとりが出来ることを模索していくこと。その事が、誰もが生きやすい、大切にされる社会に繋がっているのかもしれない。世代、信仰、男性、女性、LGBTQ、垣根を超えて、お互いを認め合いながら、緩やかに連帯していくこと。今回、街宣を企画した有志のメンバーは、これからも活動を続けていくという。そう、まだ21世紀は始まったばかりなのだ。




<作品クレジット>
監督・撮影・編集  西原孝至

1983年、富山県生まれ。早稲田大学大学院国際情報通信研究科中退。14年に発表した映画『Starting Over』は東京国際映画祭をはじめ、国内外10箇所以上の映画祭に正式招待され高い評価を得る。近年はドキュメンタリー映画を続けて制作。16年に『わたしの自由について』(HotDocs国際ドキュメンタリー映画祭正式招待)、17年に『もうろうをいきる』を劇場公開。現在、テレビドキュメンタリー番組のディレクターとしても活動中。

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